院長のコラム

においがしない!

せせらぎタウンH26年9月号の健康一口メモに、『においがしない!』と題して鼻の嗅覚についての話を掲載しました。一部を抜粋します。

 多くの動物にとってニオイの感覚(嗅覚)は食べ物を探したり、他の動物を仲間や天敵に見分けるなど命にかかわる重要な役割を果たしています。わたくしたち人間では、五感の中ではやや軽く見られがちな感覚ですが、食事の際には味覚と同時に働くことでおいしく料理をいただくのに役立ったり、お香のかおりを楽しんだりするといった文化的な側面に役立っています。また、ガス漏れや食品の腐敗など身体に危害を与えるような状況の察知にも働いています。
 ニオイを感じなくなることを、一般的に嗅覚障害といいます。夏カゼをひいたときには鼻みず、鼻づまりといった症状と同時にニオイを感じなくなったという症状を訴える人も珍しくありません。これは鼻粘膜がはれて、鼻腔の上方にあるニオイを感知する粘膜にまでニオイの素が運ばれなくなることが原因で発生します。このような場合では、炎症が改善し鼻粘膜の腫れがひくことで比較的早い時期にニオイの感覚も改善します。
 ところがカゼがなおって鼻みずや鼻づまりの症状が無くなっても嗅覚障害が続くことがあります。これはカゼのウイルスが嗅覚に関係する粘膜や神経に直接障害を与えるために引き起こされ、嗅覚障害の患者の約2割がこのタイプに当てはまります。軽症の場合には約2~3カ月の治療で改善しますが、なかなか改善の見られない重症例も多いのがこのタイプの特徴です。
 嗅覚障害の診断には一般的な診察に加えて、細くて軟らかいファイバースコープを使って鼻腔とくに上方の部分の粘膜の状態を直接観察し、ニオイの素の含まれた注射液を注射して嗅覚の能力を確認することも重要です。治療にはステロイド剤の点鼻投与が中心となりますが、嗅覚障害のタイプに応じて抗生物質、消炎剤の投与あるいは漢方薬の投与も行われます。治療後すぐに改善しなくても根気強く治療を続けることで2~3年たってから改善する場合もあるので、決してあきらめないで治療を継続する必要があります。ニオイを感じなくなった場合にはその期間の長さにかかわらず、お気軽にお近くの耳鼻咽喉科専門医に相談することをお勧めします。

[ 更新:2014-09-08 18:30:01 ]

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